【Yahooニュース連載中】世帯年収1,050万円・40歳共働き夫婦「二世帯住宅購入」も…父の死後、弟から放たれた「痛烈な一言」
毎月の幻冬舎ゴールドオンラインの連載記事がYahooニュースにも掲載頂いています。
長文になりますが、誰しもが陥る可能性のあるお話、お役に立てれば幸いです。
両親の提案から、二世帯住宅を建て一緒に暮らすことにしたA夫妻。「幸せな暮らし」のはずが、Aさんの父の死後、Aさんの弟から放たれた一言で事態は最悪の展開に……。株式会社アイポス代表の森拓哉CFPが、A夫妻の事例とともに二世帯住宅購入の注意点について解説します。 都道府県「子どもの教育費」ランキング…
人口減の一方、「シニアの1人暮らし」が増えている
少子高齢化が進んでいる日本ですが、「世帯数」をみると増加の一途をたどっています。令和2年(2020年)の国勢調査によると、2005年に4,900万世帯ほどであった世帯数は、2020年には5,570万世帯に増えています。 人口自体は2015年の1億1,114万4,103人→2020年の1億1,111万4,497人と3万人ほど減少しているのですが、どうして人口が減っているのに、世帯数が増加しているのでしょう? これには、「1人暮らし世帯の増加」が一因として挙げられます。同調査の単身世帯割合をみると、2005年の29.5%→2020年は38.1%と増加していることがわかります。 なかでも顕著なのが、「シニアの1人暮らし」の増加です。単独世帯の中心となる世代は75歳以上で、2020年時点で単独世帯の31.3%を占めています。 年をとった親が単身で暮らすとなると、子どもとしてはなにかあったときのことが心配です。こうした背景から、1度は親子離れて暮らしていたものの、あるタイミングで親との同居を選ぶという方も少なくありません。
両親の提案に「二つ返事」で快諾…二世帯住宅を建てることにしたA夫妻
Aさん(40歳)は、年収550万円で働くサラリーマンです。年収500万円で看護師として働く同い年の妻Bさんとは、10年前に知人の紹介で知り合い結婚。やがて2人の男の子を授かり、A夫妻は「マイホームを購入したい」という思いが募るようになりました。 どんな家がいいか話し合いを重ねていたAさんとBさんでしたが、ある日Aさんのご両親から「一緒に住まないか」と相談がありました。 ご両親はともに70代半ばで、少しずつ足腰が弱くなってきています。また築50年近く経つ2人の家は老朽化が進んでいて、A夫妻が家を探すのと同じ時期に、住み替えか建て替えを検討していたところだったそうです。 「いまさら住む場所を変えるのは負担が大きい」とご両親は同じ場所での建て替えかリフォームを希望していましたが、とうに子育ても終わっており、70坪の土地に夫婦2人で暮らすのは広すぎると感じていました。 そこで、A夫妻と仲の良かったご両親は、次のように思い切って提案したのです。 「この土地に2世帯住宅を建てて、一緒に暮らすってのはどうだ。最近は二世帯住宅といってもお互いのプライバシーを確保したものも増えてるみたいだし、お互い付かず離れずの適度な距離感で暮らせると思う。AもBさんも仕事が忙しいと聞いているし、一緒に暮らせば孫の面倒も見てやれる。どうだろう」 この提案を、A夫妻は二つ返事で快諾。もともとご両親とは生活圏がそれほど離れていなかったこと、また土地はお父さんの持ち物で、建築資金の一部はご両親が手配してくれるということもあり、ともに暮らすことを決断しました。Aさんの弟も、「お父さんとお母さんのそばで暮らしてくれるなら、俺も安心だし、賛成するよ」と背中を押してくれました。 こうして、A夫妻とご両親は理想の二世帯住宅を建て、新たな暮らしをスタートさせたのでした。
幸せな暮らしのはずが…A家に起こった「想定外の事態」
しばらく、ご両親・A夫妻・子ども2人と3世代での幸せな暮らしが続きました。提案どおり、Aさん、Bさんが忙しいときは祖父母が孫のお世話をしましたが、家自体は玄関や水回りを含め完全に分離されているため、ストレスはほとんどありません。ときには、3世代一緒に旅行に出かけることもありました。 しかし……。そんな日々が3年ほど続いた、ある日のことです。 80歳になったAさんの父に、ガンが見つかりました。自覚症状はほとんどなかったものの、見つかったときにはもう手遅れで、お父さんはあっという間に亡くなってしまいました。遺された母の心の空白は、なかなか埋まりません。 それに加えて、Aさんの母には認知症の症状が出始めていました。看護師のBさんはいち早くそれに気づいたものの、日々の激務からすぐに対処することができません。当初はごまかし、ごまかし過ごしていましたが、だんだんと症状が進行していきます。 夫婦共働きのAさんとBさんは変わらず忙しい毎日でしたが、認知症の母親に子どもたちの世話を任せるわけにもいきません。A夫妻は悩んだ末、母親を老人ホームに預けることにしました。
弟の発言で「大きな亀裂」が入ったA家
3世代での幸せな共同生活は、思っていたほど長くは続きませんでした。残ったのは、あと10年~20年は一緒に暮らせるだろうと思っていた広い家とAさん、Bさん、2人の子供たち。それに、完済までまだ何年もある建物部分の住宅ローンです。 なんとか気持ちを切り替えて暮らし始めたA家でしたが、新たな悩みの種が生じることになります。 父親の相続手続きをしていたときのこと、Aさんの弟がふいにこぼしました。 「二世帯住宅には賛成したけど、こんなことになるとは思いもしなかった。実際、兄貴もBさんもお父さんの世話はほとんどしてないだろ?……お母さんも早々に施設に預けることになったし」 弟の言っていることは事実ではあるものの、どこか言葉にトゲがあります。まるで、母親を施設に入れたことが悪いことだと非難しているかのようです。 「Bさんは看護師だし、両親の面倒を見てくれると思って賛成したのに……全然じゃないか」 弟の言い分はわかりますが、看護師の仕事をしているからといって、四六時中親の世話をできるわけではありません。Bさんは責められ、当惑してしまいました。 ヒートアップする弟は、「この家の土地の権利は、兄貴と同じだけあるんだよね」と言い放ちます。 子供の法定相続分は人数の分だけ均等になりますから、これも間違いではありませんが……、A夫妻と弟とのあいだには、大きな亀裂が入ってしまいました。
家を建てる前に検討すべきだった4つのポイント
二世帯住宅で幸せな日々を送るはずが、思わぬ事態に陥ってしまったA夫妻。月日が経ったいまも、解決にはいたっていません。いったい、どうすればよかったのでしょうか。 絶対的な答えはありませんが、筆者はA夫妻とご両親が一緒に暮らし始める“前”に検討しておくべきだったと感じることがいくつかあります。 1.二世帯住宅を建てる際の「弟の賛成」は、両親の「相続」が起こったあとの暮らしまでイメージできていたか ⇒A夫妻に「一緒に住まないか」と提案したとき、すでにご両親は70代半ばでしたから、ご両親・Aさん・Aさんの弟全員が、「ご両親の相続」が起こった場合どうするか見通して対策をとっておく必要がありました。可能であれば、遺言書をAさんの父に準備してもらうといいでしょう。 2.“親(父)の土地をタダで使う”ことへの留保・検討 ⇒Aさん・Bさんにとって、「親の土地をタダで使わせてもらう」ことに代償がなかったか、考えておく必要があったでしょう。「地代を払って土地を借りる」「土地を買う」など、ほかの選択肢も含めて検討する必要があります。 3.「お世話をする」ことの定義 ⇒弟の期待していた「親の世話をする」ということが具体的にどういうことなのか、肉体的なサポートなのか、精神的なサポートなのか、金銭管理のサポートなのか具体的に話し合う必要がありました。 4.二世帯住宅を「離れるときのこと」を考える ⇒建てる際に考えることは難しいかもしれませんが、「もしも二世帯住宅に住めなくなり、離れる場合はどういうときか・どういう選択をするか」も話し合っておく必要があります。売却のうえ引越しすることが受け入れられるのか、もし引っ越しをする場合には、子供の学校の問題をどうするかまで視野に入れて話し合っておくと、万が一の際にトラブルを避けることができます。 まとめ…早めの生前対策を 家を建てるときというのは、だれしも気持ちが高揚します。しかし、話が盛り上がり「よし!このアイデアで行こう!」と勢いで判断すると、選択を見誤るケースが少なくありません。 二世帯住宅に住んでいる方に話を聞くと、「建てるときは熱心に担当者が話を聞いてくれたが、建ててから起こる課題は知らんぷり」という声もあります。「建築メーカーは住宅を建ててもらうのが仕事」ということを念頭に置き、建てる前に話し合うべき項目を冷静に考えておく必要がありそうです。 ご自身だけで考えることに限界を感じる場合は、無理をせず信頼できる第三者に相談することをおすすめします。 ※本記事に登場する人物の背景は、事実関係を損なわない範囲で入れ替えています。