不動産による相続税節税策が使えない!?
(当該ブログは月一回発行のメルマガの転載記事です。
文長がメルマガ調になっています)
4月20日の日経新聞を読んでいた時のことです。
「おー、最高裁判決出たか―!」という記事がありました。
ご紹介させて頂きますね。
タイトル
『 相続マンション評価見直しで最高裁判決国税「宝刀」にお墨付き 』
以下、記事原文
路線価などに基づいて算定した相続マンションについて、最高裁は19日
国税当局が評価して追加徴税した処分を適用と認めた。判決は国税当局が
評価を覆す「伝家の宝刀」を使う場合に合理的な理由を求めたが、適用自体は
追認した。不動産節税への影響は避けられないとみられる。
以上原文。
ピンと来る方は既にピンと来ていると思うのですが、相続税の節税のために不動産
(主に区分所有マンション)を購入するスキームがあるのですが、
それに一定メスが入ったという内容です。
解説を続けます。
今回の不動産は相続税申告の際には相続税評価額3億3000万円として申告されました。
相続税評価の一般的なルールは、
土地は「路線価評価」
建物は「固定資産税評価」
という評価を利用します。
この一般的ルールに従って3億3000万円とはじき出し相続税申告をしたわけですが、
これに対して国税が「伝家の宝刀」を抜いたのです。
「伝家の宝刀」の詳しい内容は、財産評価基本通達の総則 6項にあります。
「著しく不適当と認められる財産の価額は国税庁長官の指示を受けて評価する」
この一文「伝家の宝刀」を使い国税庁が出した答えは評価額12億7300万円という金額。
相続税申告の評価額とは実に10億円近い開きがあります。
国税庁はこの12億円の再評価額を根拠に数億円の追徴課税を求めたものと思われます。
納税者側からすると
「なんでやねん!たまったものじゃない。
路線価評価+固定資産税評価の申告で何が問題なんだ!」
と裁判で争いになったわけです。
気持ちは分かります。
そのような経緯で裁判が争われ、昨日最高裁が、「伝家の宝刀」に実質的なお墨付きを与えた、
つまり相続税評価額は12億円と認めた。
というのが今朝の記事の内容になります。
税業界ではずしんとインパクトある記事になると思います。
では、なんでもかんでも「伝家の宝刀」を抜かれるのか?
というと、そんなことはないように思います。
今回最高裁が重視したのは90歳代の父親が銀行借入をしてまで、
マンションを購入したということ。
90歳代というと、いつなんどきその時、相続の時が訪れるか!?
実に想定しやすいタイミングですね。
「どうして90歳のおじいちゃんが、12億もするマンションを銀行借入をしてまで買うの?
それって相続税を回避するためだけじゃないの!?」
こんな突っ込みは別に国税庁でなくとも、
誰でもいれたくなるものの気がします。
大切なのは「普通に考える」という視点なのだと思います。
私も仕事柄、相続税の節税策を聞かれることがあるのですが、
正直いうと、その話をするとそれだけで話が終わってしまい、
本質が見えにくくなるため、あまり好きではありません。
大切なのは「普通に考える」こと。
私の信念でもあります。
普通に考えて、普通に使ったら、それはそれで立派な節税になります。
それが普通の節税で普通の結果になります。
それの何が問題なのか!?
税金を払うのは誰もが好きなものではありません。
かく言う私も税務署からの納税納付書の茶封筒が届くと、
「払いたくないなあ・・・」といういやーな気持ちになります。
でも、それはただの「社会の仕組み」であって、人生の本質ではありません。
相続相談の活動は、
もちろん相続税の節税という道筋を通ることはあります。
ただ、少なくとも最重視することはありません。
税金が人生の本質に影響してはいけないと思うからです。
消費税が3%だろうが、10%だろうが、今後15%に上がろうが、
人それぞれの人生の本質に影響はありません。
あってはいけないと思います。
ご相談いただく方の人生の本質に寄り添いたい。
それがこの相続相談、サポート活動の源泉になっています。
なぜそれが源泉になっているかというと、私自身が両親を
亡くした時に本質を少なからず見失っていたという
恥ずかしい過去があるからです。
「もう二度と同じような失敗はしたくない」
そう思って今の活動を続けています。